Circle Narrating Section #03 Exhibition
[展覧会]青柳菜摘+佐藤朋子
「TWO PRIVATE ROOMS – 往復朗読」

出展作家 青柳菜摘, 佐藤朋子

ゲスト出演 朝倉千恵子, 飯岡幸子, 荏開津広, カニエ・ナハ, 郷拓郎, 小宮麻吏奈, 時里充, 日和下駄, 布施琳太郎, 山下澄人(50音順)

会期 2020年11月17日(火)-12月6日(日)12:00-20:00
   [11月24日(火), 11月30日(月)休廊]
会場 theca(コ本や honkbooks/池袋)
    〒171-0014 東京都豊島区池袋2-24-2メゾン旭2階
    ※会場へのアクセスが非常に分かりづらいため事前にご確認の上ご来場ください。
入場料 500円(リーフレット付き)

〈往復朗読〉とは、「サークル・ナレーティング Section #02」として開催された、青柳菜摘、佐藤朋子の二人のアーティストによる、その日ごとに物語やその断片を選び、読み語るアートプロジェクトです。SNS上で2020年4月20日より日々途切れることなく、互いに自分がいる場所から、その一回限りの出来事をTwitter / Periscopeを通して映像でのライブ配信をしてきました。何を読むのかはその日次第で、まるで交換日記やカラオケの順番待ちのように応答に応答して、往復する朗読に起伏を与えていくオンライン・パフォーマンスです。静かな即興性は、コロナ禍のパンデミックで「動く」ことも「集う」ことも出来ない窮状下、言葉の特性の一つである「ことば遊び Word Play」に原点回帰することであり、共に離れたところから「交える(交換、交通、交歓、交遊……)」ことの可能性を拡げる実践でもありました。
本展「TWO PRIVATE ROOMS – 往復朗読」は、〈往復朗読〉をSNS上での公開制作と位置づけ、埋もれていくタイムラインの中から二人のアーティストによる「即興の痕跡」を取り出し、新たに制作した映像作品を通してその行為の意味を問い直します。ソーシャルメディアにおけるパフォーマンスが躍起となる現在において、〈往復朗読〉のインタラクションの行方をぜひご高覧ください。

なお、映像作品は上映時間に1週間を要するため、3週間の会期のうち、火曜日は4,5月、水曜日は6月、木曜日は7月、金曜日は8月、土曜日は9月、日曜日は10月、と曜日ごとに分けて上映します。会期最終日12月6日(日)は〈往復朗読〉の最終回として、スペシャルイベントを開催予定です。

Performance Series サークル・ナレーティングhttps://honkbooks.com/cn/
サークル・ナレーティング Section #02 〈往復朗読〉https://honkbooks.com/cn-02/
#往復朗読 on Twitterhttps://twitter.com/search?q=%23%E5%BE%80%E5%BE%A9%E6%9C%97%E8%AA%AD&f=live

読む内容など、もはやどうでもよい。Twitterから今日も「往復朗読」の新着通知が来る。今日の朗読は27:33、もう少しで朝。今日は本に付箋を付けて何箇所も読んでいる。今日の朗読はキッチンで生地を捏ねながら。“枕”と称して朗読の前に話をすることもあれば、気が付くともう読み終わっている日もある。
インターネットは見えない時間を繋ぐおおきな役割を果たしたが、それと同時に人々が世界の全貌を捉えられるかのような錯覚を起こさせた。大事件は、誰にとってもの大事件となり、知らずうちに世間の時間が大々的に停止しまったように思わせる。髪の毛が伸び、家を引っ越し、本が増えていっていることを、いつの間にか忘れてしまう。私はその引き留められない時間を、現在ではなく未来に書き留めたい。
映像に残った朗読は、公になった「たった今」である。”今”は、タイムラインを右往左往しながら相手の声に向かう。読む本はその瞬間を体現するでも、隠喩するでもなく、読む行為自体が“今”の寓意となる。読み間違えが、息の詰まりが残って、いつまでも明日に反響していく。(青柳)

青柳菜摘 Natsumi Aoyagi
1990年東京都生まれ。ある虫や身近な人、植物、景観に至るまであらゆるものの成長過程を観察する上で、記録メディアや固有の媒体に捉われずにいかに表現することが可能か。リサーチやフィールドワークを重ねながら、作者である自身の見ているものがそのまま表れているように経験させる手段と、観者がその不可能性に気づくことを主題として取り組んでいる。近年の活動に「彼女の権利——フランケンシュタインによるトルコ人、あるいは現代のプロメテウス」 (ICC, 2019)、第10回 恵比寿映像祭(東京都写真美術館, 2018)、「家の友のための暦物語」(三鷹SCOOL, 2018)など。
WEB|datsuo.com Twitter|twitter.com/datsuo

レクチャーの誕生は、朗読といわれている。朗読をするということは、誰かによって過去に書かれたテキストを声に出して読む、ということだ。レクチャーは通常、教える人と、教えを受ける人がいるが、朗読において、「教え」を受ける対象は、聞き手だけではない。朗読を行う人も、言葉を声に出すことによって、言葉の受け手となる。声に出して読むという行為には、複数の享受が同時に折り重なっている。
本プロジェクトの「往復朗読」は、ライブ配信で行われたため、聞き手は画面の向こうにいる。配信された内容は自動でアーカイブ化され、聞き手は配信時だけではなく、未来にもいる。読み手の私は、本に書かれた内容を、聞き手に向けて話す。言葉は私のからだに響き、私にとって異物とも呼べる思考や声たちを、私自身もまた享受していく。
本に書かれた言葉を借りて、声は放たれていく。声は人との距離に敏感になっている。声は、聞き手や声の持ち主を通っていき、双方のからだを震わす。朗読は、からだを介して自分ではない誰かとの距離を縮め、近づけていく。(佐藤)

佐藤朋子 Tomoko Sato 
1990年⻑野県⽣まれ。東京藝術⼤学⼤学院映像研究科メディア映像専攻修了。レクチャーパフォーマンスを主として「語り」による表現活動を行う。主な作品に、2018年《The Reversed Song, A Lecture on “Shiro-Kitsune (The White Fox)”》、《103系統のケンタウロス》(個展:Gallery Saitou Fine arts、神奈川)、《Museum》(個展:「MINE EXPOSURE」(BIYONG POINT、秋田))、2018年 – 2019年《瓦礫と塔》《ふたりの円谷》(Port B 東京修学旅行プロジェクトにて上演)。
WEB|tomokosato.org Twitter|twitter.com/tmkstooo

本展企画 和田信太郎[コ本や honkbooks]
会場監修 戸石あき
テクニカル 山形一生
グラフィックデザイン 柳川智之

お問合せ honkbooks@gmail.com

主催 コ本や honkbooks, 佐藤朋子
協力 東京藝術大学大学院映像研究科, RAM Association, 中村外
文化庁「文化芸術活動の継続支援」補助金受託事業